自動車テクノロジーをめぐる諸問題についての歴史からの検討

 

自動車社会の諸問題

·         交通事故死 約1万人/年 これは、鉄道事故や航空事故死と較べてけた違い

·         運転者のモラル スピード違反・飲酒運転・幅寄せ・ひき逃げなど

·         排気ガス・騒音・標識などによる生活環境悪化 人・街・生活のアメニティ破壊

·         道路敷設にまつわる不正 天下りと談合→国土の荒廃

·         温暖化ガス アイドリング・ストップは免罪符?

·         エネルギー資源の浪費 ガソリン・天然ガス

·         渋滞と都市計画

 

問題の分析 原因は?

·         水俣病と似た構造 メーカー(外貨獲得)・ゼネコン(献金)・公団(天下り)は行政と利益共同体をなす。市民も自らリスクを受け入れる。

·         しかし、それだけではない。自動車への憧れは途上国共通。なぜ?

·         道路や自動車はどう設計され、どう運用されるべき?

 

交通の歴史 『道と駅』木下良著、大巧社、1998年より

駅=もともと道に付属した交通の拠点 馬・休憩・飲食など交通を助ける

古代( 〜奈良時代)

·         律令(ex.大宝律令・延喜式)国家による統一的な計画と整備(駅伝制)

·         中央と地方の通信と交通の確保(行政的必要)

·         広大で直線的な道(6m9m12m・・・。果樹並木)≒ローマのアッピア街道

·         駅=官立官営。馬、宿泊、地方行政府、官人の宴会など 伝馬(郡役所に)

中古・中世(平安―鎌倉)

·         宿(しゅく)」の成立 民間の交通集落

·         鎌倉幕府「駅路の法」 御家人・荘園による馬と糧食の整備の義務付け

·         鎌倉街道 騎馬用の軍事道路(幅3m程度)

近世(戦国・江戸)

·         大名・藩による経済・軍事道路の整備(宿の統制と道路の建設) ex.武田の「棒道」

·         信長・秀吉による整備 東海道、山陽道、東北道などの前身 橋・一里塚など

·         徳川幕府の道 五街道(道中奉行)+脇街道(勘定奉行)+各藩の管理(ex.道番)

·         宿場町の発達 東海道53宿場(100100疋の人馬を常備)

·         橋・渡し、関所(入出国管理)、宿場、飛脚などの整備

·         歩行用の道(砂利道)+並木の整備 徒歩交通の発達

近代(明治)

·         欧米の交通システムの導入 鉄道と馬車

·         M5 宿場・飛脚などの統合→陸運会社→陸運元会社

·         車両通行による道路の荒廃→M4有料道路 M9 国道・県道・里道の整備

·         鉄道網の整備 M22 東海道線開通 宿場の衰退と駅前集落・都市の繁栄

·         M39鉄道国有化→政治路線「我田引鉄」→S62 国鉄解体へ

現代(昭和〜)

·         昭和初期より タクシー・トラック・バスの利用

·         マイカー時代 70年代 旅客輸送量鉄道を上回るS48

·         舗装道路の津々浦々への広がり

·         郊外の市街化(レストラン・スタンド・パチンコ・マーケット)

·         駅前都市の渋滞・商店街などの荒廃

·         橋・トンネル・高速道路の整備(公共事業の展開)

 

観点 どう評価するか

·         自動車交通と他の交通

·         ガソリン車と代替エネルギー車

·         公共交通と個人交通手段

·         大都市、地方都市、住宅街、田園地帯、山野

·         基幹道路、コミュニティ道路、高速道路、農道

·         生活手段として、産業インフラとして、趣味としての自動車

·         安全性、燃費、性能、デザイン そのバランスを支える哲学は?

·         メーカー・メディア・消費者のあり方 リードしているのは?

·         メーカーの姿勢・哲学

·         交通関係諸法の評価 道交法ほか

·         NGO、消費者運動 ラルフ・ネーダー

·         車道と歩道、自転車道など

·         街路樹・照明・標識・駅・スタンドなど

·         警察・公団・道路情報 運営の問題

 

歴史からみた道路交通

·         現在の自動車交通は交通・通信(コミュニケーション・輸送・移動)のニーズの時代の流れにおける一形態である。情報技術やインフラの整備によって変化する可能性も

·         →「交通」「道路」概念の中で「自動車交通」を考えなければならない(が、現実はどうだろう?)。

·         道路の公共性と自動車のプライベート性の高さ

 

問題の解決に向けて 提案など

·         自動車の所有と使用に公共的性格を高め適切なガバナンスによって管理する、私的な使用について経済的・技術的・倫理的コストを高くする。

·         「道」の機能や性格について国家・地方で総合的に再評価して開発・運用する。